フラワーサイコロジー研究所 浜崎英子さん

フラワーサイコロジー研究所

取材・執筆:手嶋航太郎、吉岡柚希奈

浜崎英子さんは「NPO法人フラワーサイコロジー協会」の代表として、華道と心理学を融合した「フラワーセラピー」を実践されています。華道に関してこの他にも、日本いけばな療法学会の立ち上げと運営や、生け花療法士の養成オンライン講座の実施などをされてきました。また、公認心理師(国家資格)として、京都府ひとり親家庭自立支援センターと放課後等デイサービスで、主に発達の課題を抱えている生徒の心理的支援をされています。 

写真:浜崎英子さん

—フラワーセラピーの活動を始めたきっかけを教えてください。

浜崎:大学生時代、生け花を趣味で習いつつ学内外で心理学を学んでいましたが、当時はその二つを融合するアイデアはありませんでした。シングルマザーになって少し落ち込んでいた時に、たまたま花展を見に行く機会がありました。立派な華道作品があるなかで凛と咲いている小さな花を見て感情が高まったんです。その時、改めて花の力に気づいて、生け花と心理学の世界をうまく融合させたら自分が診療科に対し抱いていた物足りなさを補えられる場を作れるんじゃないかと思ったんです。

—華道と心理学にリンクするものがあったのですね。

 浜崎:枯れた葉や虫に食われた葉でも、作品に使うことで華道の精神性に繋がっていくんです。一輪の花の命と個性を尊重して、それぞれの存在価値を認めていくのが、華道の真髄だと思います。人も同じであることに気づくことが大事だと思います。

—独自のフラワーセラピーはありますか?

 浜崎:この研究所を立ち上げようと思った十年前頃は、フラワーセラピーには「この人にはこの種のお花を」や、「バラを使う人は優しいはずだ」などのステレオタイプを基本とするものが多かったんです。違うことに取り組みたくて、身近なお花から一人一人の物語を引き出せる、独自のフラワーセラピーを考案しました。

—博士学位もお持ちとお聞きしました。

 浜崎:博士の学位を取る事は一つの目標だったので、色んな誘惑を断ち切って取り組みました(笑)。花が持つ癒しの力はみんな分かっているのに、なぜ花に癒す力があるのかを研究する人はあまりいなかったんですね。心理療法と名乗っている以上、根拠のあるエビデンス提供が出来るように研究所として学会発表したり、論文を書いたりもしています。支援を行うにしても理論ばかりでは成り立たない部分もあるため、実践と研究の場を両方設けています。

—浜崎さんの活動を通して人々に今後も発信していきたいことはなんですか? 

 浜崎:花は、個性と向き合って自他両方の価値を見出し、社会での自分の役割に気づけるツールであることを知ってほしいですね。華道には社会が持続するために必要なヒントが詰まっています。書道、茶道、華道といった日本の伝統文化は、どれも「マインドフルネス」が根底にあります。日本の文化にも関わらず生け花はハードルが高く捉われてしまいがちですが、持続可能な社会づくりに必要な要素が詰まっていることを是非若い人たちを中心に知ってほしいです。

—常にお忙しく精力的に活躍されているようですね。

 浜崎:いえ、全然家でボーっとしていることもありますよ(笑)。立場が違う仕事を一日の中で行うことで心もリフレッシュされるし、自分の好きなことを仕事に出来ていることが何より幸せなことです。地域支援活動を行う中で、右京区を初め全国各地の色んな人に毎日会うので、新しい発見があって、忙しいと思ったことがないですね(笑)。

—地域の方とフラワーセラピーを通してどのように関わっていますか?

 浜崎:誰しも何か役割を持って取り組めることが身近にあるはずなので、高齢者や子供中心に、誰でも簡単に取り組んでもらえる企画を実施しています。皆で作った生け花作品を右京区役所や嵯峨鳥居本地域などに飾ったり、高齢化が進んでいる地域に訪れて花で街並みを飾ったり、地域祭りに積極的に参加したりしています。参加者の人達が私の活動を通して、自分から外に出ていくことが出来るようになった人が多くて、嬉しく思っています。

—今後、さらに挑戦していきたいことはありますか?

 浜崎:認知症の方や障がいのある人達に働いてもらえる花屋さんを作りたいです。注文を間違えるレストランって知っていますか。あれが理想のスタイルです(笑)。あとは、ひとり親家庭の支援モデルを作りたいと思っています。動ける親が一人しかいない状況でつかみたい支援が使えないことが多々あるので、ひとり親のニーズに合わせた支援モデルを用意したいです。既に子と共に自立していくために親子で参加できる事業を増やしていますが、時間的貧困な問題を更に支援して、子供の成長を見守られる環境を作ってあげたいです。

—読者に向けてメッセージをお願いします。

 浜崎:変化を生み出すにはより多くの人を巻き込む力が必要になってくるので、フラワーサイコロジー研究所の強みであるネットワークの広さが少しでも参考になればと思います。いきなり社会活動をしようとするとなかなか難しいですが、参加することが大事だと思うので、「花で作品を作ってみました」って事務所に持ってきてもらっても全然構いませんよ(笑)。地域の人達が作ったものと一緒に飾るので、お待ちしてます(笑)。

—執筆者コメント

 インタビュー当日も様々なスケジュールをこなされた後にお会いしましたが、お話を聞くとさらにタフでフットワークが軽い方だという印象を受けました。自身の経験を糧に時間をかけて様々な事業に取り組まれている姿には感銘を受けました。何より気さくで笑顔溢れる方なため、自然とそういった方たちが浜崎さんの周りにも集うんだろうと感じました。

(吉岡柚希奈)

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