京料理せんしょう 辰馬雅子さん 

Senshou

取材・執筆:宮川瑚々奈、多田輝真

「せんしょう」は、右京区の四条葛野大路で伝統的な京料理を提供する料亭です。旬の京野菜など新鮮な食材を使った会席料理が特によく知られています。お店のことや右京区のこと、京都の歴史や文化について、店主の辰馬雅子さんにインタビューさせていただきました。もともとはバブル経済の頃に五条通りで創業されたお店で、バブル崩壊後に四条通りに移転されました。

—お店について詳しく教えていただけますか。

辰馬:バブル経済の頃に開業したこのお店は会員制であり、漢字でお店の名前を表していました。「せん」には「多くの」という意味、「しょう」には「幸福、幸せ」という意味があり、たくさんの幸せを願う名前です。現在の代表が女性であることから、より女性らしさを表すために、名前の表記を漢字からひらがなに変えました。
このお店は料理屋で、町の文化のなかのひとつであると思っています。昔は町の老人会の会場として料理屋が使われていました。京都には今でも昔ながらの文化が多く残ってますが、これには京都の昔の家の構造が関係しています。昔の家は、間口が狭く奥行きが深いつくりになっています。家が繋がっているので、京都では作った料理の残りを隣の家に持っていくという習慣があります。そうして色々な家から集まった料理が「おばんざい」の始まりです。ハレの日は非日常のお金をかけた豪華な料理をお店に頼んで食べる、ケの日は日常で「おばんざい」を食べるという風習があります。京都では食事の暦を大切にしていて、昔ながらの文化を継承しています。このお店もその役割を担っていると思います。そのための努力は大変ですが、やりがいでもあります。

―お店のメニューに何か特徴があれば教えていただけますか?

辰馬:お店のすべてのメニューに京都の食材を使っています。地元の食材なのでお客さんはみんな新鮮でおいしいと言ってくれます。

―国内外の人に知ってほしいお店の魅力はなんですか?

辰馬:このお店に観光目的で来られる人は少ないですが、海外の人も来ます。お店のことを好きになってくれて毎年のように来てくれる人もいます。隠れ家的なお店で、地元の食材を使っているので、みんな故郷のような温かみを感じると言ってくれます。京料理は、素材の味を活かす洗練された薄い味付けで癒されるような料理です。穏やかさが京料理とお店の雰囲気に表れています。

―辰馬さんにとって右京区の魅力はなんだと思われますか?

辰馬:京都を代表するものばかりでなく、あまり目立たない要素にも良さがあります。右京区には嵐山のソフトクリームやわらび餅など観光客に人気なものがたくさんありますが、渡月橋や竹林の里のような厳かな名所にも是非行ってみてほしいです。

―ウェブサイトの読者にメッセージをください。

辰馬:京都の賑やかな側面だけでなく、静かで厳かな側面も見てみてください。清水寺や金閣寺のような派手で豪華なスポットもいいですが、銀閣寺や龍安寺のような静かで落ち着いたところにも京都らしさや京都の文化が隠れているところにも注目してみましょう。つまり、「京都の文化ってなに?もっと深く考えてみよう」ということだと思います。

執筆者コメント

今回のインタビューに快く応じてくださったことに、女将の辰馬さんにはとても感謝しています。京料理は、味だけでなく見た目や雰囲気など五感で楽しむ料理でありますが、そこには料理を作ってくれる人の人柄も特徴の一つであるように感じました。この記事を読んで京都や京料理に興味を持ってくれたら、ぜひお店に足を運んでみてください。

(多田輝真)

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